我が家で飼っているゴールデンレトリーバーですが、とにかく毛が抜けます。気を付けてケアしているつもりなのですが、風に乗って飛んでいってしまうようです。
近所に動物があまり好きではない方がいらっしゃって、先日「洗濯物に毛が付くからどうにかして!そんな汚い犬さっさと手放しなさい!」と言われました。ひどいと思いませんか?確かにこちらが悪いのはわかります。しかし、愛情いっぱいに可愛がっている愛犬に対してそんな言い方をされるのは許せません。洗濯物に毛が付くと言う理由で訴えられることはあるのでしょうか?
その場合、損害賠償額はいくらくらいなのでしょうか?また逆に、我が家のペットを侮辱した名誉棄損で相手を訴えることは出来るのでしょうか?
犬を飼う以上、ある程度毛が飛散することは避けられないものであり、隣家の洗濯物に毛が付いたからといって直ちに損害賠償請求が認められることはありません。
ただ、犬の毛の付着状況が、隣家住人として我慢しなければいけない限界(「受忍限度」といいます)を超えるような異常なものである場合、犬の毛による被害をこうむった人は、その犬の飼主に対して不法行為に基づく損害賠償としてクリーニング代を請求することができます(民法718条1項)。また、被害の程度があまりにもひどい場合、慰謝料を請求することも可能です。犬の毛による被害について直接に判断した裁判例はありませんが、参考になるものとして、犬の鳴き声があまりにもうるさいことを理由として損害賠償請求訴訟が提起されたケースで、30万円程度の賠償が認められたものがあります(東京地裁平成7年2月1日判決等)。
民法上、ペットの飼い主は、「動物の占有者」として、自分の飼育する動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負っています(民法718条)。
この責任は、飼い主が相当の注意義務を尽くしたといえる場合には負わなくてよいこととされており(民法718条1項但書)、訴訟になれば、飼い主が犬の毛が飛散しないように「相当の注意義務を尽くしたといえる防止措置をとっていたかどうかか」が問題となります。
ですので、ご質問のケースでは、「今後、毛が飛ばないように処置していきます。」とありますが、これは法的にみても、非常に大切なことです。
なお、飼い主が、飼い犬を侮辱されたとして名誉棄損で隣人を訴えることはできません。これは、我が国の法律の解釈上その名誉が保護されるのは、「人」に限られると考えられているからです。