あるドッグイベントに遊びに行った時のことです。大きな運動場でワンちゃんと飼い主が一緒に参加するイベントで、多くの参加者・ギャラリーがいました。見たことのない犬種やカワイイ服を着たワンちゃんなどがいて、私もたくさん写真を撮りました。飼い主さんに声をかけて了承を得てから撮ったり、競技に出ているワンちゃんを撮ったりしました。
ある日、参加したイベントについてインターネットを検索していたところ、ある人のブログの中にうちの犬が載っていました。よく思い返してみてもそのワンちゃんと話した記憶はないので、勝手に載せられたのだと思います。悪いことは書いていなかったので良かったのですが、若干嫌な気持ちになりました。うちの犬はモデルをやっているわけでもないので問題はないのですが、無許可で使用されるのは非常に気になります。ブログや物など、無許可で写真を使用された場合、何か訴えることは出来るのでしょうか。
他人を無断で写真撮影することについて、最高裁判所は、「人は、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」(最判昭和44年12月24日)として、いわゆる「肖像権」を認めています。従いまして、人の場合は、勝手に他人を写真撮影して、公開するようなことがあれば、その写真の内容や公開の態様によって、肖像権を侵害したとして、損害賠償の対象となることがあります。
ただ、本件でお尋ねの場合については、人ではなく、ペットであり、ペットの場合、「肖像権」は認められていません。また、判例上、有名な競馬にパブリシティー権、すなわち、顧客を誘因する力がある商品的価値を有する競馬が独自に有する権利があるかどうかが争われたことがありましたが、本件のように、イベントに参加する一般的なペットに、パブリシティー権や肖像権は認められていません。なお、ペットに着せた自作の洋服等が非常に独創的で、それ自体が、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術」の範囲に属する著作権を有するもの(著作権法2条1項1号)とまで言えるような場合には、当該ペットを無断で撮影して公開することが、著作権を侵害するというころも理論的には考えられます。
しかし、上記のような著作権が認められるのは極めて例外的な場合であり、現実的には、ほとんどないものと思われます。ですので、お尋ねの件では、結論としては、無許可で写真を使用されたとしても、訴えることは難しいと思います。