先日、会社前の歩道や駐車スペースの草むしりをしていた時、除草剤を使うかどうかという話し合いになりました。ここで疑問に思ったのが、自分の敷地以外の場所に除草剤を撒いて、もし散歩中の犬が知らずに舐めてしまい体を壊す又は死んでしまったら、誰の責任になるのでしょうか。また、敷地内の駐車場に除草剤を使用して同じようなことがあった場合はどうなるのでしょうか。今までにこのような事件があれば教えてください。
他人のペットに怪我をさせたり、死亡させたりしてしまった場合、怪我をさせたことについて、故意又は過失があれば、その損害を賠償する義務を負います(民法718条第1項)。
お尋ねのケースにおいて、除草剤を散布することが故意過失と評価できるかが問題ですが、会社の敷地外の歩道は、誰でも通行できますので、除草剤を散布していることを表示しないで散布した場合、故意過失があると評価され、損害賠償請求が認められる可能性があります。他方、会社の敷地内の駐車場は、無断で外部者が侵入することが予定されておらず、除草剤を散布して、それを表示していなくても、原則として責任が認められることはありません。ただ、公道に接しているなど外部から容易に侵入できるような場所であれば、散布していることを表示すべきといえます。
ただ、万一、損害賠償請求が認められることがあるとしても、むやみに草を食べないようにすべき注意を怠った飼い主にも責任があるとして、賠償額が大幅に減額される可能性があります。
裁判例では、野犬狩りのために市が設置した毒エサを食べて飼い犬が死亡した事案について、広報を徹底しなかった市の責任を認める一方で、買主についても「犬の飼育に当たっては、道路その他に放置された食物等を食しないよう平素から訓練しておくことが期待され、右に挙げたような注意を怠らなければ、本件事故の発生も回避されたであろう」と述べて、損害賠償額を大幅に減額しています(熊本地方裁判所昭和50年5月28日判決)。