里親募集サイトに登録した我が家の仔猫に応募があり、里親さんの元に連れていきお渡ししました。その方は猫を初めて飼う方だったため扱い方が分からず、猫の方も怖くて逃げ回っていたようです。メールや電話などで相談にのっていたのですが、お渡ししてから2ヶ月ほど経ったころ、「もう手に負えないから引き取りにきてくれ」という連絡が突然入りました。相談を受けていた時は大分慣れてきた兆しが見えていたのですが、里親さんにも仔猫にもこれ以上負担がかかってはいけないと思い、連れて帰ることにしました。私の手元に戻ってきたときには5ヶ月になっていたので、 改めて里親さんを探すのが難しくなっていました。さらに、そろそろ避妊手術も終えておかなければいけないので、引き取る条件として避妊手術代を支払っていただくよう交渉しましたが、相手からは「そんな義務は無い」と拒否されてしまいました。
2ヶ月経ってもなつかないなら返してもいいという話は最初から一切しておりません。こちらとしては、里親として飼った以上、飼い主として次の飼い主に譲るためにかかる費用(ワクチン代、避妊手術代、交通費など)は自己負担だと考えていますが、実際に請求することは出来るのでしょうか。
里親募集サイトは、子犬や子猫の飼主を探す手段の一つとして広く利用されています。里親募集サイトを利用して子猫を譲渡する場合、ワクチン接種や不妊手術を行ってから譲渡する場合もありますが、これを行わずに譲渡する場合には、里親においてワクチン接種や不妊手術を里親の費用負担できちんと行ってくれることを譲渡の条件とする場合が多いです。
これは、子猫の譲渡自体は無償ですが、譲渡に当たって貰い受ける側に条件(負担)を付けるものですから、民法上、「負担付贈与」(民法553条)と呼ばれています。しかし、お尋ねの件ではその条件を付けていなかったようですので、連れて帰ることに同意する際に、ワクチン接種や不妊手術の費用、交通費について里親が負担することを新たに条件にしなければなりません。お尋ねの件では、その条件交渉が決裂した状態で連れて帰ることだけに同意したといえますので、それらの支払いを求めることは難しいと言えます。 なお、負担付贈与においては、相手方が負担を履行しない(先ほどの例に即して言えば、譲渡の条件にしていたにもかかわらずワクチンの接種や不妊手術を行ってくれない)場合には、里親の同意がなくとも、負担付贈与を解除して、子猫を返すように求めることができます。
いずれにしても、里親への譲渡に際しては譲渡条件をきっちりと定めるとともに、譲受けを希望する人が、子猫を末永く愛育できる人物かどうかを十分に見極めたうえで譲渡することが必要です。