愛犬のミニチュア・ダックスフントの足の手術を大きな病院で受けました。通っていた小さな病院ではできなかったため、県内でも有名な大きな病院を紹介してもらいました。手術のため前日から預けたところ、次の日病院から「心肺停止のためすぐ来てほしい」という連絡が来ました。慌てて病院に向かいましたが、すでに愛犬は死亡しておりました。原因を聞いたら麻酔で発作を起こしたそうです。そんな可能性は全く聞いておらず、担当した獣医師からその後説明はなく、通っていた病院の先生が代わりに説明してきました。どうしてもその時の担当した獣医師の対応が納得できず、今でも悔やまれます。このような場合に訴えることはできないのでしょうか。
ペットに動物病院で手術を受けさせる場合、飼主と獣医師(法人化された病院の場合は当該法人)との間で、準委任契約(民法656条)を締結します。獣医師がペットの手術を行う場合、この契約に基づき「善良なる管理者の注意義務」(善管注意義務、民法644条)を負い、これに違反して損害を発生させた場合には、その損害を賠償する義務を負います。
もし、お尋ねのケースで、平均的な獣医師では失敗しないような麻酔の失敗があり、これにより死亡したといえる場合には、手術費用やペットそのものの損害、あるいは慰謝料の賠償を求めることができます。
死亡による慰謝料については、20万円程度を認めた裁判例があります(名古屋高裁金沢支部平成17年5月30日等)。
また獣医師は、準委任契約に基づき、手術内容やそのメリット・デメリットについて飼主に対して説明する義務を負います。これは、手術には一定のリスクや費用が避けられないことから、飼主に、手術を受けるかどうかを判断する前提となる情報を与える必要があることから認められるものです。提供すべき情報としては、ペットの病状、治療方針、他の選択肢の有無、手術によるリスク、費用などが考えられます。
例えば、お尋ねのケースでも手術前に、手術の際に行う麻酔によって発作が起き死亡という事態が生じる可能性があることについて説明を受けていれば、愛犬に手術を受けさせることを控えたかもしれません。
それにもかかわらず、術前に獣医師が説明義務を果たさなかったというのであれば、説明義務違反に基づき損害賠償を請求することができます。