こんにちは。アニマル医療センター 桃ペットクリニック 院長の加藤です。今年は超就職難のようで、学生の皆様は生まれた時期が悪かったのか、本当にお気の毒です。私が大学6年生の時のこの時期は、研究室にも顔を出さず、家に引きこもって国家試験の勉強をしていた記憶があります。大学にマジメに通っていても国家試験に受からなければただの人ですから、研究室の教授も文句を言わず見守っていてくれていました。学生時代のペットは先輩から引き取ったアメショー風の猫ちゃんで、先輩の引越しの日にポツーンと部屋に取り残されていたのをそのまま貰っちゃいました。今回は猫の代表的な病気についてお話します。
【病気①腎臓病】
猫の病気で一番多いのが腎臓病です。中年~老猫が嘔吐で来院した場合はまず腎臓病を疑います。急性と慢性が有りますが、症状としてはどちらも嘔吐で飼い主が気づく事が多いです。急性腎不全の場合は治療をして完治する事も多いですが、慢性腎不全の場合は治りきらず、腎臓の悪化をいかに遅らせるかが目標になります。治療法としては食事療法・飲み薬・点滴を組み合わせます。予防法はありませんが、定期健診で早目に発見すれば、食事療法だけで維持できる事もあります。
【病気②泌尿器系】
冬場に多くなるのが泌尿器系の病気で、膀胱炎・膀胱結石・尿道閉塞(結石が尿道に詰まってしまう状態)などがあります。これらは単独で起こることも有りますが、それぞれが関係していて連鎖的に起こることも多いです。膀胱炎や膀胱結石の段階で発見すれば大事には至りませんが、尿道閉塞になってしまうと、腎不全にまで発展したり、入院が必要になったりと治療も大変になります。予防法は泌尿器対策用のフード等も発売されていますが、定期的な尿検査が一番確実です。尿検査は尿を採るだけですので、ペットに負担がかかりませんから頻繁にしてあげると良いでしょう。
【病気③ウイルス感染?】
外出する猫ではウイルス感染も非常に多く、猫エイズ・猫白血病等の治療不可能な病気もあります。他の猫との接触で感染し、症状としては口内炎や貧血等様々です。ワクチンが未接種で外出している猫の具合が悪い場合は、まずウイルス検査をする事になります。治療は対症療法になり、抗ウイルス剤がありませんので根本的な治療法はありません。予防法はワクチン接種か、他の猫との接触をさせないようにする事です。注意点として、一般的な猫のワクチンの3種混合ワクチンには猫エイズ・猫白血病の成分が入っていないので、猫エイズ・猫白血病を予防したい場合は獣医に確認すると良いでしょう。
【病気④悪性腫瘍(ガン)】
悪性腫瘍(ガン)も中年~老猫で多い病気です。腫瘍の種類は肥満細胞腫・扁平上皮癌・乳腺腫瘍等色々ありますが、確定診断は細胞を顕微鏡でみる病理検査でします。症状は発生場所や大きさにより様々ですが、腫瘍の種類によっては、症状が出た時には「手遅れ」ということもあります。定期検査で早期発見ができれば治療成果も良くなります。腫瘍は発生メカニズムも不明な点も多いため、予防は非常に難しいですが、定期的なレントゲンや超音波検査で早期発見をするのが現時点では一番現実的でしょう。
全体的なまとめ
猫の寿命は15~ 20 年です。人間に換算すると1 年で4~ 5 才老化する計算になり、6~7 才(人間で30~40 才)ぐらいから病気の発生も多くなるのは人間と同じです。どんな病気にも共通するのが早期発見・早期治療が非常に重要で有効だという事です。
きっと皆様の病気以外の日常生活のトラブルにも同様の事が言えると思います。ガンの手術も早期なら小さな傷で済みます。定期検査プラス早期治療の料金と、定期検査しないで後期治療の料金は同じような気がします。日々の診療で色々な飼い主・ペットを見てきて思い出すのは、「結局どんな人も人生はプラスマイナスゼロじゃ」という研究室の教授の言葉です。