【ペットのストレスとは】

　ストレスが引き起こす病気は色々有りますが、共通しているのは免疫力の低下です。免疫力が低下すると感染症やガンになりやすくなります。
　ペットが一番ストレスを感じるのは飼い主の愛情不足です。これは飼い主側の愛情が変わっていなくても、実際に接触時間が短くなればペットはストレスを感じます。具体的には、飼い主の旅行・入院・出産等や仕事が忙しく帰宅時間が遅くなる事などが続いてもストレスを感じます。事情は人それぞれですから仕方の無い事ですが、人間同士で理由が分かっていても家族ならば心配するでしょう。ましてやペットの関心事項の大部分は飼い主についてですから、説明も無く飼い主が不在になったり遅く帰宅すれば、人間以上に心配してしまいます。
　他にも同居ペットの死や正月などの連休による生活時間の変化、来客の増加等でもストレスから体調を崩したりします。

【症状】

　症状としては、発熱・嘔吐・下痢・不整脈・各種臓器の異常・神経異常等様々で一概には言えませんが、実際に血液検査の数値が異常を示したり、今まで安定していた持病が急速に悪化したり、急死したりすることも稀ではありません。当院での症例では、飼い主が旅行に行く2～3日前から具合が悪くなり、通常の病気の範疇では当てはまらないほど血液検査の結果が急速に悪化、まさに奇病で瀕死の状態にまでなってしまった子がいましたが、飼い主が旅行から帰ってくると1～2日でみるみる回復し、その後も何事も無かったかのように暮らしているわんちゃんがいます。

【対策】

　ストレス対策はペットに話しかけ、説明をし同意を得ることです。言い換えれば、一家族として人間と同じように心のある生物と認めて接する事です。ペットは飼い主の顔色を良く見ていますし、日本語もかなり理解しています。私の感覚では特に犬・猫の場合、人間の３～５才児ぐらいの知能はあるように感じます。『人間と違ってペットは話をすることができない』等の意見もよく耳にしますが、他種生物の意思を理解できていないのはむしろ人間の方ではないかと思います。ペットも意思表示をしており、いつも接しているとそれが分かるようになってきます。
　某大学の研究で『顔色を見るのは人間特有』のような研究結果が発表されましたが、少なくとも家庭のペット達は人間の顔色を見ていますし、飼い主の毎日の行動パターンから次の展開も予想しています。自分の恋人がどこに行ったかもいつ帰ってくるかも分からず、連絡も取れない状況を自分に置き換え想像してみれば、ペットの気持ちが分かるのではないでしょうか？そんな場合も一言説明があれば心配せずに済むのではないでしょうか？帰りが遅くなる日には出かける前にペットに『今日は帰りが遅くなるよ』と一言話してあげるだけで安心しますよ。

全体的なまとめ

　今回の話はストレスという一見分かりにくく、検査機器等ではっきり結果が出るものではありません。しかし、マウスの実験でもストレスをかけると胃潰瘍を起こす結果も出ています。人間・犬・猫・マウスというような種差ではなく、生物にはストレスはマイナスであるという事です。
　私の経験ではペットの入院中、面会時に飼い主が冗談でも『安楽死』の話をするとかなりの確率で1～2日中に死亡してしまいます。反対に、飼い主が『がんばろうね』という言葉をかけると凄く元気付くように見えます。検査データ上は凄く悪いのに熱心な飼い主のペットは頑張るのです。『安楽死』などという話をきいて絶望し、やる気を無くして死亡してしまうのだと思います。
　喜んで『死』を望む生物はいないでしょう。ペットも長生きしたいという観念ではなく単純に『生きたい』という本能を感じているのだと思います。私も学生時代には授業で犬の解剖を行いましたが、その犬は保健所から引き取り、学生達で安楽死を行いました。その時の犬の悲痛な泣き声と悲しい顔は今でも鮮明に覚えています。周りの状況を見て自分達が殺される事を理解し、殺さないでほしいと訴えていました。
　皆様、ペット達を真の家族の一員として接してあげてください。そうすれば病気になる確率もかなり低くなると思いますよ。